ktdiskのブログ

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古い感覚を総動員した理論武装

新しい現象に対し、「古い感覚を総動員した理論武装」で戦うな

9月16日新潮社主催の梅田さんの講演会に参加してきた。
ケチャップのふた」の話から「オープンソースというインターネットの強みがフルに活かされた成功体験」の話まで、興味深い話が多かったが、上記のPhraseが最も印象的だった。
「大変なパラドックスになっていて、これはなんとかしなければならない」と言っていたが時代に対する危機感ももちろんあるのだろうが、梅田さん自身が日本のエスタブリッシュメントの方と接する過程で苦心されてきたのだろうなぁ、と感じられた。

パラドックスとは、「一見すると筋が通っているかのうように見えるけど、大きな視点でみれば謝った結論を導き出す思考方法」ということだが、日本を先進国に頑張って押し上げたものすごい優秀な人が、ものすごい頑張って、なんとか筋を通そうとするから余計やっかいなのだろう。

講演会のQ&Aの際に、
Googleが玉石混交の中から玉を選び出す突出した能力を持った場合に、
 Googleの経営者が意図的に社会をある方向に扇動するような仕組みを
 作ってしまうというような危険性はないのか?」
という問いがあった。
総表現社会に内在する危険性をとらえた、鋭い指摘だと私も思ったが、仮にこういう鋭い指摘をされる方が、
「であるからして、来るべき総表現社会の新しい課題として、
 インターネットの利用者はその危険性をしっかり認識すると共に、
 そうならないような仕組作りも進めなければならないのでは?で、そのためには・・・」
とさらに続ければ、新しい変化の際に必然的に発生する問題に対して、前向きに取り組め、よい方向に物事が進むと思う。経験豊富な方からみて「ここも抑えておかないとあらぬ方向にいく危険があるから考慮漏れなら考えておいたほうがいいよ」という指摘は、「おっちょこちょい」の若者にとっては、意外とありがたいものだ。
だが、そういう建設的な議論の変わりに仮に
「であるからして、そういう危険性が内在した社会はとても住みにくいから、
 そういう方向に進むべきではない」
と、一刀両断されてしまうと、
・拒絶感が先行しているので、分かり合おうとするのがものすごく大変
・優秀なので論理的に矛盾がない反論を頑張ってしてくるので着地点を見つけるのが大変
という2つの点で疲れてしまうのだろう(質問をされた方がどちらの考えをお持ちなのか、また全く別の考えをお持ちなのかは分からない)。

社外取締役としては、会社が直面している問題はできるかぎり深く知っておく責任があった。しかし実際のところ、事態がかなり深刻にならないかぎり、生え抜きの経営幹部に対し、確固たる根拠に基づき反対するのは難しい

『ルービン回顧録』 〜第十一章 P.417〜

先日読んだ『ルービン回顧録』にも、あのロバート・ルービン社外取締役として生え抜きの経営幹部と議論に如何に苦慮しているかが記載されていた。自分の進退が直接かかっているので、業界知識、会社の歴史、人脈などを総動員して戦いを挑む経営幹部というのも相当手強そうだ。あのルービンですら手を焼くのだから、なんかげんなりしてしまう。「生え抜きの経営幹部」の姿勢が世の常識から見てものすごく悪いとか、ロバート・ルービン社外取締役がものすごく無能とか、個人の能力・資質の問題ではなく、変化を起こす際に、こういったパラドックスは必ず発生し、なおかつ収束させることの難易度が相当高いと捉えた方が自然だろう。

パラドックスの解消に労力を費やし、皆で終わりのない議論を続け、疲弊し、変化への対応の遅れがかなり深刻になるのはきっとさけなければならない。そのためには、そういった大きな変化がおこる際の必然的な問題への対応方法を考えなければならないが、これは結構難しい。少なくとも、エスタブリッシュメントの方が若い人から教わることを忌避しないことと同様に、若い人がエスタブリッシュメントと分かり合えるように、彼らとのコミュニケーションをとることも忌避してはいけないのだろう。

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