ktdiskのブログ

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バーチャルな企業統合のもたらす経営のパラダイムシフト

カスタマーエコノミー革命―顧客中心の経済が始まった

カスタマーエコノミー革命―顧客中心の経済が始まった

顧客中心の経済では、社内の事業部が自律性を諦めたように、企業も昔から引き継がれてきた独立を重んじた考え方を改めなければならない
・・・<中略>、マネジャーは自分の仕事について、かつて下したことのないような重大な意思決定を迫られる。たとえば、どのプロセスが部下やビジネスを定義するのか、勝算のあるビジネス分野はどこか、何をやるべきで何をやるべきでないのか、どのプロセスを捨てどのプロセスを取り込むのか、といった判断を下さなければならないだろう。
・・・<中略>、プロセスを手放すことは、特に顧客のニーズを満たすのに不可欠なコア・プロセスであれば、リスクを伴う。企業が他企業への依存度を高めるに従って、支配下に置かれてしまう可能性もあり、意図する方向に進めなくなってしまうかもしれない。それでも特定のプロセスに執着し続ければ、コストはかかり、リスクは大きくなる
『カスタマーエコノミー革命』 〜第9章 P.291

ある時代はバリューチェーンの川上から川下まで1つの企業が束ねるという垂直統合モデル採用する企業が成長し、ある時代は自社の最も強みを発揮できる事業を特定し、そこに経営資源を集中投下した差別化・集中化戦略をとった企業が成長してきたように、経営環境の変化を受けてその時代に即した様々な経営モデルが提唱されてきた。そして、マイケル・ハマー氏は次の時代に必要な経営モデルは、顧客に提供する価値を最大化するためのバーチャルに統合された企業群であると説いている。そして、さらにその企業群におけるマネージャーは、かつて「選択と集中」という考え方の下、得意な事業経営資源を集中し、それ以外の事業は捨て去ったのと同様に、得意なプロセスに経営資源を集中し、不得意なプロセスについてはアウトソースするなどの戦略的意思決定をすることが求められると強調している。極端な言い方をすると、コンピテンシーのない業務は外に全て出さなければならないという非常に厳しい時代になったということである。
論理的にも理解できるし、考え方も正しいと思うが、ではいざ自分がマネージャーでそれをやれと言われたすると、必ず取り除かなければならない阻害要因がいくつかでてくると思われるので、その点を思いつく限り書いてみたい。

〜阻害要因①〜
事業選択と集中がなされていない」
これは阻害要因というより、優先順位の問題であるが、企業が活動していく上で不可欠なプロセスまでアウトソースしてしまうより前に、不可欠でない事業を外だししてしまうことの方が先決であるし、またこの難しい取り組みも組織がスリムな方が実施しやすいと想定される。バーチャルな企業統合とは、事業の差別化・集中化戦略を推し進めて、なお顧客の価値を最大化するための施策であることはマイケル・ハマー氏も協調している。

〜阻害要因②〜
「業務の適切なアウトソース先がない」
経理・人事業務などの比較的アウトソースしやすい業務のみでなく、在庫管理・製造など自社が卓越した能力は持たない領域は全てアウトソースするとなると、自社より優れておりアウトソースの受け先となってくれる企業を見つけることには相当な困難が伴うことが想定される。また、仮に優れた業務を持っている企業であっても、協力を示してくれるかわからなければ、信用がおけるかどうかもわからないため、相手先の選定には相当な慎重なリサーチが必要となるし、長期的な関係を視野にいれ、資本提携などもあわせて検討することが求められるであろう。

〜阻害要因③〜
「バーチャルな統合を実現するシステム投資が多額」
インターネットやその周辺技術によって企業間の取引コストは劇的に低減しているが、仕組作りからその維持まで無償でできるわけではないし、それによって企業間の取引コストが現時点で全てゼロになるわけではない。また、現在のテクノロジーであるべき仕組みを適正なコストで構築することができるかどうかも評価が必要となる。バーチャルなコラボレーションをするためのシステム構築コストも念頭においた上でアウトソースのメリットを適切に評価することが必要となる。


いくつか想定される阻害要因を記載したが、だからといってバーチャルの企業統合が不可能と言っているわけではもちろんない。BPRの大合唱が業務の抜本的な見直しを伴わない安易なERPの導入に終わったという失敗の轍を踏まないためには、新しいモデルを腹の底から理解することのみならず、その実現の難しさを腹の底まで理解することが必要である。難しさを十分に理解した上で、手を引くのか、それとも差別化の源泉と位置づけ実現させるかでマネージャーの力量がはかられる

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