Thoughts and Notes from CA

アメリカ西海岸の片隅から、所々の雑感、日々のあれこれ、読んだ本の感想を綴るブログ。

情報の開示レベルとその精度について

フューチャー・オブ・ワーク (Harvard business school press)

フューチャー・オブ・ワーク (Harvard business school press)

第二の要因は、常連の投稿者が、新しいページや改訂されたページを、スペルミスから事実関係のまちがいまであらゆる面でしっかり校閲するように心がけていることだ。・・・<中略>ウィキペディア利用者の多くが、オープンソース・ソフトウェアの根本にある信念に同意している。それは、<充分な数の目があれば、どんなまちがいも見えてくる>というものだ
フューチャー・オブ・ワーク』 〜ゆるやかな階層制〜 P.71

特定の品質管理者がいないのに、wikipediaに掲載されている情報の質が高い要因が本書の中で述べられており、その中に上記のPhraseがでてきた。特定の能力の高い(但し、限られた人数の)品質管理者をおくのではなく、不特定多数の人間がレビューできるように公開することにより情報の質を高めるという手法をwikipediaはとっているというように解釈できる。

私が、はてなで仕事を始めてまず不思議に思ったのは、彼等が社内で電子メールをあまり使わないことだった。その代わり社員全員が、ビジョンや戦略の議論、新サービスのアイデアから、日常の相談事や業務報告に至るまで、ほぼすべての情報を、社内の誰もが読めるブログに書き込む形で公開し、瞬時に社員全員で共有するのである。特定の誰かに指示を仰ぐための質問、それに対する回答、普通なら直属の上司にまず報告すべき内容、すべていきなり全員に向けて公開するのである。
http://www.shinchosha.co.jp/foresight/web_kikaku/u106.html

梅田さんの『シリコンバレーからの手紙』にはてなのワークスタイルについての記述があった。これは、日常業務で発生した課題を「特定の誰か」に相談するのではなく、社員全員に公開することにより、問題解決に要する時間を短縮するという手法をはてなはとっているというように解釈できる。


私が以前勤めていたコンサルティング会社では、プロジェクトが終わるごとにその成果に対する評価をプロジェクトマネージャーとしていたが、その情報は社員全員に公開されていた。また、昇進の申請をする際には「自分はどのプロジェクトでどのような成果をあげたのからもう昇進できる」というようにアピールし、評価者が基準に照らし合せて判定をするわけだが、その情報も全て全社員に公開されていた(「あなたはこういう理由で今回は昇進できない」などの情報も含めて)。大勢の人間の評価をする際には公平性が問題となることが多いが、社員全員に情報を公開することにより、完全とは言わないまでも高いレベルで公平性が保たれていたように思う。


いくつか例をあげたが、『情報をオープンにすることにより、その質を高める』という手法を共通して採用していると言うことができる。とは言っても、情報の質を高めるためにはただ公開をすればよいのかというと決してそうではない。その効果を高めるためには下記のような条件をクリアしなければならず、その期待効果が高くなればなるほど、入念な仕組みの検討が求められることは間違いない。
・情報を公開する対象がその品質を高めることについてモチベートされていなければならない
・公開の目的に応じて、公開の手法(WEB、ブログ、F2Fのコミュニケーションなど)を適切に選択しなければならない
・公開の目的と公開の手法のメリット・デメリットを公開する側、される側が充分に理解しなければならない

Creative Commons License
本ブログの本文は、 クリエイティブ・コモンズ・ライセンス(表示 - 非営利 - 継承)の下でライセンスされています。
ブログ本文以外に含まれる著作物(引用部、画像、動画、コメントなど)は、それらの著作権保持者に帰属します。